ニュースの概要

英国デボンで森林保全に取り組むWoodland Trustが、野生きのこの採りすぎに警鐘を鳴らした。担当者によると、商業目的の採集者が袋いっぱいのきのこを持ち去り、歩道沿いの菌類をほぼ取り尽くす例が確認されている。森の地面を踏み荒らす行為も問題になっている。きのこはシカやアナグマ、ミミズ、ワラジムシなど多くの生き物の食べ物でもある。人が大量に持ち去れば、野生動物の食料が減り、森の暮らしの循環にも響きかねない。個人が趣味で少量を採ることと、売るために大量に採ることの差が、あらためて問われている。

引用元: 英国デボンで野生きのこの過剰採集に警鐘、森林生態系への影響を懸念(BBC)

分析・見解

きのこは森の動物たちの食卓でもある

きのこと聞くと、人間が食べるものという印象が強い。しかし森の中では、主役は動物たちである。シカは傘の部分をかじり、アナグマは地面の近くの菌類を探して歩く。ミミズやワラジムシは、傷んだ菌類や菌糸(=きのこの根にあたる細い糸状の部分)をえさにしている。

人が歩道沿いのきのこを根こそぎ取ると、動物たちが最も見つけやすい場所の食料が消える。秋は動物が冬に備えて栄養を蓄える時期でもあり、影響は小さくない。

採った後より、採る前後の行動が森を傷める

実は、きのこを取ること自体より、取るときの行動のほうが森に響くことがある。地面に生えているきのこは、地中に広がる菌糸のネットワークの一部にすぎない。ここを何度も踏み固めると、土の中の空気が減り、菌糸が伸びにくくなる。

落ち葉をかき分けて探す、棒で土を掘り返す、といった行為も同じである。農作物の収穫なら畑は翌年もう一度耕せる。しかし森の土は、人の手で整えることができない。一度傷むと、元の状態に戻るまで長い年月がかかる。

趣味の採集と商売の採集は、そもそも量が違う

個人が夕食用に数本を採るのと、飲食店や卸に売るために一度に数十キロを集めるのとでは、森への負担がまるで違う。英国では多くの土地で、個人が食べる分の少量採集は黙認されてきた。一方、販売目的の採集は、土地所有者の許可が要る場合が多い。

日本でもマツタケ山の入山料や、地域の組合が採集を管理する例がある。山の持ち主が採集量や時期を決める仕組みは、古くからある知恵である。英国で起きている問題は、その知恵が観光や趣味の広がりに追いついていない様子を映している。

見分けがつかない人が増えるほど、被害は広がる

もう一つ見逃せないのは、採集者の知識の差である。経験の浅い人は、食べられるかどうか分からないきのこまで袋に入れてしまう。結局捨てられるきのこも多く、森にとっては無駄な犠牲になる。

動画や投稿で採集が人気を集めるほど、こうした人も増える。ルールを知らない人を責めるだけでなく、現地の看板や案内で、採ってよい量や場所を分かりやすく伝える工夫が欠かせない。

ビジネスへの影響

きのこ関連の事業者は出所を示す時代になる

野生きのこを扱う飲食店や販売店は、仕入れ先の説明を求められる場面が増えるだろう。どこで、誰が、どんな許可のもとで採ったのかを答えられる事業者は、信頼を得やすい。逆に、出所が曖昧な仕入れは、評判を損なうおそれがある。

実務としては、仕入れ先との契約書に、採集地の許可や採集量の上限を書き込むことが第一歩になる。メニューや商品ページに産地と採集方法を載せるだけでも、顧客の安心感は変わる。

体験型事業は、森を守るルールを商品にできる

きのこ狩りツアーやワークショップを運営する事業者にとって、今回の問題は追い風にもなる。参加者に、採る量の目安、踏み荒らさない歩き方、残すべききのこの見分け方を教える内容は、体験の価値そのものを高める。

具体的には、一人あたりの採集上限を決める、ガイドが同行して採る場所を分散させる、といった運営が考えられる。栽培きのこの収穫体験と組み合わせれば、森への負担を減らしつつ、収益も確保できる。採りすぎを防ぐことは、事業を長く続けるための投資でもある。

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